SPECIAL
自社商品も忖度しないYouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』の魅力を紹介
企業のYouTube活用の際にしばしばボトルネックとして浮上するのが、どのように商品を紹介するかという問題です。
強みや特徴のアピールに力を尽くすとどうしても「売り込んでます感」が出てしまいがちですし、かと言って説明が不足するとプロモーションとして成立しなくなってしまう。
今回は、そんな難問をユニークな手法で見事に解決している株式会社有隣堂のYouTubeチャンネルをご紹介いたします。
一年間で登録者数30倍に。有隣堂のYouTubeチャンネルって?
【開設日】
2020年2月末
【登録者数】
13.8万人(2022年3月現在)
【概要】
100年以上の歴史を持つ書店チェーンの有隣堂。
YouTubeチャンネルへの挑戦は、「これからは必ず動画の時代になる」という現社長・松信健太郎さんの鶴の一声がきっかけに。
「有隣堂しか知らない世界」という人気番組へのオマージュあふれる名前もキャッチーで素敵ですが、チャンネルの一番の魅力は、実際に有隣堂で取り扱っている商品を紹介しているにも関わらず、商品の売り込みを目的として作られていないことです。
昨年2021年の1年間だけで登録者数が30倍を超えたという人気の秘訣は何なのか?そのキーポイントとなっている3つのアイデアを分かりやすく解説していきます。
売り込み感0を演出!「有隣堂しか知らない世界」3つのアイデア
①公式キャラクターが商品をアピール
【ポイント】
- キャラクターのインパクトで話題を創出
- 商品紹介はユーモラスかつ忖度なしの本音で
- 視聴者目線の自由なMCで商品を紹介
チャンネルで主役級の存在感をはなっているのが、MCを務める公式キャラクターR.B.ブッコローです。
ミミズクをモチーフにしたキャラクターの彼は好奇心旺盛な正直者。嘘をつけず、本音しか言えない毒舌のキャラクターが人気を博し、チャンネル躍進の立役者になっています。
カラフルな見た目のインパクトだけでなく、書店員さんとの会話のテンポ感も素晴らしいですよね。どの動画も7〜10分程度ですが、出演者の会話のテンポ感が良く、続けて何本も視聴したくなりますよね。
こちらの動画では、有隣堂で取り扱っている中華料理やたこ焼きの缶詰、バケツの容れ物に入った綿菓子をブッコローが食レポ。「貧乏だった頃を思い出す」など、お店の販売商品であるにもかかわらず忖度なしのレポートに視聴者からは信頼のコメントが多数寄せられています。
本チャンネルで注目したいのは、いいところだけをアピールするのではなく、デメリットも含めた本音で商品を紹介したり、自社だけでなく他社商品も数多く取り上げたりしているところです。
こうしたアプローチは、従来の宣伝やプロモーションの方法論とは真逆の手法ですが、視聴者ファーストが最優先されるYouTubeチャンネルでは非常に有効です。
もう一つ、ぜひ着目しておきたいのが動画の中でのブッコローの立ち位置です。自社商品に対して好き勝手なことを言いまくる彼は有隣堂にとっては局外者であり、実はその目線は視聴者の目線と一致しています。言うならば、来訪客の心の声を絶妙なトークで代弁してくれる存在がブッコローなので、彼が大人気なのも頷けますよね。
「第三者目線で自由に語るキャラクター」をMCとして起用するアイデアは、押し売り感のない商品紹介をする上でぜひ参考にしたいところです。
② 従業員の素顔が見れるコンテンツ作り
【ポイント】
- YouTubeが成功体験を得るきっかけに
- 社員の素の魅力が満載
チャンネルの二つ目の大きな特徴は、実際に有隣堂で働く従業員の方が出演していることです。
書店のスタッフだけでなく、バイヤーなどその職種もさまざま。MCのブッコローと共に本や文房具の商品を紹介したり、特技を披露したりとコンテンツのラインナップも豊富です。
こちらの動画では、文房具バイヤーの岡崎さんが登場。
“文房具王になり損ねた女”というとてもユニークな肩書きを持つ岡崎さんは多くの回に出演しており、視聴者からの人望も厚いです。従業員としての岡崎さんではなく、文房具愛溢れる岡崎さんの素の魅力で企画が成立しています。
岡崎さんの他にもJ-POPを古文訳して歌うアルバイトの折橋さん(現在は退職され、元アルバイト)や、書店の一角を食品物産展にした食品バイヤーの内野さんなど、従業員の特徴を活かした企画が考えられています。
どうしても仕事では抑え気味になってしまう自分の個性をチャンネルのなかで存分に発揮することで、社員が成功体験を得るきっかけとなっているのも、このチャンネルの魅力の一つです。
③ 失敗をバネにした攻めの企画
【ポイント】
- 失敗をバネに三ヶ月で大きくシフトチェンジ
- 面白いチャンネルづくりのための一貫した攻めの姿勢を
攻めた企画満載の「有隣堂しか知らない世界」ですが、その原点は伸び悩んでいたチャンネル黎明期にあります。
動画投稿をスタートした当初は、イラストを用いた「本の解説動画」に注力していたものの再生回数、登録者数が思うように伸びなかったそうです。従業員が朗読しているという点では今の動画に通ずる部分もありますが、企画内容は現在の路線と全く異なっていますよね。
その後、解説動画を6本出したところで大きくシフトチェンジし、その3ヶ月後にはMCブッコロー誕生。失敗をバネにした攻めの企画が続々とプランニングされ、チャンネル開設の半年後には想像の斜め上をいく動画が生まれています。
企画のバリエーションは日を追うごとに増え、プロの小説家の1日のルーティンについて掘り下げた回は、50万回再生を超える人気動画になっています。
書店ならではの人の繋がりを生かしつつ、“稼ぎ”と言った生々しい話題にまで切り込む強気の姿勢が素晴らしいですよね。
講談社が運営している人気YouTubeチャンネル「いちなるTV」とのコラボ企画も、「普段このチャンネルでは出てこない商品を知れてよかった」「バイヤー目線ではないチョイスが新鮮」など、コラボならではの魅力を感じるコメントが溢れています。YouTubeでは、同業他社やライバル企業との共演も決して珍しくないですよね。一緒に面白いものを作ったり、共同で業界を盛り上げていく姿勢をシェアすることがチャンネルの成功につながります。
「有隣堂の知らない世界」の動画は、どれの本当にユニークで面白いものばかりなので、他の作品もぜひ実際にその目でチェックしてみてくださいね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、商品プロモーションにおける難題の一つである「宣伝している感」をユニークなアイデアで解決したチャンネルのモデルケースとして、株式会社有隣堂さんの「有隣堂しか知らない世界」をご紹介いたしました。
YouTubeチャンネルを成功させるためには、視聴者の目線で動画を作成し、「もっと見たい」「もっと知りたい」とワクワクさせるコンテンツに昇華させることが重要です。
今後も手本となるような事例を見つけたら定期的にお届けしていくつもりです。どうぞお楽しみに!
映像制作のエレファントストーンが運営する本メディアZOORELは、映像やクリエイティブにまつわるトレンドやノウハウを発信しています。最新情報は以下のメールマガジンにて更新中。お気軽にご登録ください!