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タイのパートナーと映像づくり。クオリティや金額、依頼の仕方って実際どうなの?

タイのパートナーと映像づくり。クオリティや金額、依頼の仕方って実際どうなの?

こんにちは、エレファントストーン アジアパートナー事業担当の辰巳です。

タイトルを見て「なぜ、タイ?」と疑問を思っていらっしゃる方もいると思いますので簡単な自己紹介をさせてください。

私、辰巳は日本とタイのハーフで24年間タイに住んでいました。タイのシラパコーン美術大学を卒業した後、来日。日本語学校に1年間通い、卒業後エレファントストーンに入社。お気づきかもしれませんが、私にとってタイ語の方が母語なんです。

現在は、アジアパートナー事業担当として、「ヒトテマ」というAIとアジアリソースのハイブリッド動画制作サービスに携わっています。具体的な業務内容としては、ヒトテマで制作する映像の撮影や編集、3DCGやアニメーション制作をアジア諸国のパートナー企業に発注したり、新しい制作パートナーを開拓したりしています。

タイの企業が制作した映像がSNSなどで注目を集めているのを目にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで今回は、タイの映像制作って実際どうなのか、ご紹介していきます!

なぜ、映像制作はタイ?

エレファントストーンでは、AIとアジアリソースのハイブリッド動画制作サービス「ヒトテマ」で映像を制作する際、タイを始めとするアジア諸国のクリエイターに制作を依頼しています。

では、なぜタイのクリエイターに依頼するのでしょうか?

クオリティと金額、ふたつの観点から見ていきましょう。

タイの映像クオリティ

グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック2019〜2023によると、タイのSNSメディアの成長率が「5.05%」で世界の平均「4.3%」と比較してそれほど差がないという結果を示しています。

その中でOTTサービス※の成長率が最も多く「16.64%」、インターネット広告が2番目に成長率が「13.62%」です。この数字でわかるのは、クリエイターの人材は不足していないと言うことでしょう。

メディアの成長率だけではなくタイは数多くの広告賞に毎年賞をとっています。

・Cannes Lions 2022

・AD STARS 2021

日本の映像トレンドとは違いがありますが、技術力とクリエイティブ力は低くないと言えるでしょう。

※OTTサービス:Over The Topの略称。インターネット回線を通して行われるコンテンツ配信サービスの総称、YouTube、TVer、ABEMAのような無料サービスや、Netflix、Hulu、Amazonプライムなど。

タイの映像の制作費

技術力、クリエイティブ力共に力を上げているタイの映像業界ですが、金額が気になりますよね。正直に言うと、タイは日本に比べて物価が安く、およそ日本の3分の1くらいです。

わかりやすくガパオライス1杯の価格で例えると…

タイ:70バーツ(約230円)
日本:1,000円以上

少しバンコクを離れると70バーツのガパオライスは大盛りで目玉焼き付きでスープおかわりし放題です。場合によって2品注文できる店もあります。

このように、物価や人件費が日本より低価格なため、映像も比較的安価に依頼することができます。

タイのクリエイターに依頼するには?

では、作りたい映像のイメージやジャンル・予算に合ったタイの映像制作会社またはフリーランスに出会うためにはどうすれば良いのでしょうか。

現地調査可能な会社やサービスを通して調査して貰ったり、現地で映像制作をしている日本企業に問い合わせたりするのが王道と言えるでしょう。

ただ、上記の方法は間違いではないのですが、クリエイターを探すのに費用がかかってしまい、実際に映像を制作するまでに予算をほとんど使ってしまうなんてこともあります!クリエイターがどのように仕事を獲得しているのか、タイの文化を事前に知っておけば、ある程度は予算を抑えることができるでしょう。

ここでは、私が普段どうやってタイのクリエイターに依頼しているのかを紹介します。

使用するツールはFacebook

タイで日常生活には欠かせないプラットフォームといえば「Facebook」です。13歳以上のタイの人口の84.9% がFacebookを使用しています※。

映像の制作においても、クリエイターはFacebookを通して仕事を取りに行く傾向があります。
FacebookのファンページをHPの代わりに使用しているため、Googleで「タイ 映像制作会社」などで検索しても、タイの制作会社のサイトはなかなか出てこないでしょう。ファンページ以外にも「Facebookグループ」機能でクリエイターと依頼する側が集まり、クリエイターが営業したり依頼主側が発注したりと、Facebook内でやりとりが完結しています。

実際にどの様に使われているのかというと…

【パターン1】
クリエイター側:プロフィールや制作実績を投稿し、お問い合わせを待つ。
依頼側:クリエイターのプロフィールや制作実績を確認し、お問い合わせをする。

【パターン2】
依頼側:イメージしている映像の内容、場合によって金額などを記載しクリエイター応募を投稿。
クリエイター側:投稿内容を確認した後、依頼側に興味あると問い合わせる。

この2パターンを繰り返し、やっと打ち合わせや取引が始まります。

※HootsuiteとWeAreSocial、2021年の調査

日本の映像をタイに発注してみた!

実際にタイに日本企業の映像を発注した結果を3つの項目に分けてご紹介していきます。

1.日本語のフォントやテキストデザインはどうなる?

ここまで紹介したようにタイでは技術面の問題はないとは言え、国によってデザインの文化に違いがあります。日本とタイで大きく違うのが、「文字組み」「タイポグラフィ」です。日本では漢字、ひらがな、カタカナの3種類の文字の形があります。

実際に見た方が早いと思うので以下の文字組みをご覧ください。どちらがタイで制作したものでしょう?

①の画像

②の画像

正解はです!

①はタイの制作会社に依頼したものです。いかがでしょう?多少の違和感を感じますでしょうか?

日本では漢字、ひらがな、カタカナによって文字の左右の「空き」を揃えるという文化があります。そのため、フォントをそのまま並べるだけでなく、カーニングという文字と文字の間隔を調整する作業が必要です。

引用:https://chot.design/concept-of-design/8fc8746a30ae/

言語や文化に違いがあるため多少の違和感があるのは仕方のないことではありますが、数あるフォントの中から用途によって使い分けたり、文字間隔をカーニングしたりと、しっかり要望を伝えることで、日本で使用しても違和感のない仕上がりにすることができます。

2.タイと日本、映像の使い方は同じなの?

タイと日本では、掲載する場所が同じでも、どんな映像を使うかに違いがあります。「サイネージ映像」を例に、日本との違いを見ていきましょう。

1枚目の画像を見ると同じ場所でもさまざまな企業の広告があります。そのため、どれだけ他社より目立つかが勝負どころになります。また、2枚目の画像では高速道路の柱までデジタルサイネージになっており、道を進んでいくにつれて広告映像も変わります。そのため、タイでは映像の内容ではなく、ブランド名や企業ロゴを目立たせて覚えてもらうことが重要視されています。

ここからはタイと日本の実際のサイネージ映像を見ていきましょう。

・タイのサイネージ映像

・日本のサイネージ映像

いかがでしょうか?タイは映像内の素材に動きをつけて画面のスペースを使用していますが、日本はシンプルで滑らかな映像を制作していますね。

このように、タイと日本では、同じ媒体でも重要視されていることが違うことがあります。この映像の作り方の違いを解決する為に、エレファントストーンでは下記のような工夫をしています。

⒈両国のトレンドを把握する
映像をマーケティングに活用する場合、トレンドや流行などを把握していないと、質の良い映像が作れないでしょう。完成した映像を見て「作りたかった映像と違う」とならないよう、事前に日本の映像トレンドをお伝えするようにしています。

⒉専門用語を丁寧に伝える
両国の専門用語の意味や言葉の使い方などの理解ができていないとコミュニケーションコストが高くなってしまいます。日本にしかない言葉やタイにしかない言葉があるように、お互いの言語が持つニュアンスをしっかりと理解し合うのは簡単なことではありません。
タイのパートナーとのやり取りをする際は、専門用語をタイ語に置き換えて伝え、認識の齟齬を生まないように注意しています。

⒊参考事例を共有する
言語の壁がある中で一番効率的にニュアンスを伝えるのは「参考事例」です!ですが、日本の「参考事例」をもとにして制作しても、短期間でコントロールできないクリエイターの癖や、お互いが見てきたメディアのイメージを治すことは難しいため、日本の参考事例に近しいタイで制作された参考事例を共有することで、制作にかかる時間を増やさないよう工夫しています。

このように、お互いの違いを理解し、補うための工夫をすることがよりいい作品に仕上げるためには必要不可欠になってくるでしょう。

3.言語や文化の違いをどう乗り越える?

エレファントストーンでは、私が日本語とタイ語を使ってクリエイター、クライアントとやりとりをしています。日本とタイ両方の生活を知っているため、あまり驚くことはないですが、ビジネスにおいても文化の違いがたくさんあります。

例えば、「報連相」は日本では社会人として個人個人が考えて行動するのが当たり前ですが、タイの「報連相」は優先順位を決めて進行を確認し、依頼主側がすることが多いです。若手クリエイターが全力で業務に取り組めるように、依頼主側が見守る傾向があるためです。そのため、依頼主が日本企業の場合も、お互いがリラックスしてクリエイティブを絞り出せる環境を作り上げるのも大事なことになってくるでしょう。

日々やりとりをする中で、言語と文化の違いを理解することがこの中で一番大事なことだと感じています。たとえ、指示書や説明書で言語の壁を越えられたとしても、スムーズに仕事が進むとは限りません。些細な気遣いやクライアントの目的を達成するために丁寧にコミュニケーションを取ることなどは大事になってくるでしょう。なぜなら、映像はクリエイティブであり、機械のような力を使う労働ではないからです。

実際にお互いのことを話しながら、アイスブレイクするのもいい方法でしょう!
(私がタイ出張でこっそりと行ったように…)

まとめ

いかがでしたか? 言語や文化の違いはありますが、お互いのことをしっかりと理解し、コミュニケーションをとりながら進めていくことで期待を超える映像を制作することができます。

タイでの映像制作について少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひ一度ご相談ください!

ヒトテマについて辰巳と話してみる

テクノロジーにより、世界はどんどん国境を感じられないほど近づいているため、よりお互いのことを理解し合うことがこれまで以上に大事になってくるでしょう。

お互いのクリエイティブを混ぜ合わせることで、今までになかった素晴らしい作品を作っていけると思います。タイに限らず、さまざまな国と協業し、クリエイティブ業界が進化していくことが何より楽しみです!

この記事を書いた人

辰巳貴廣
エレファントストーンのアジアパートナー事業担当

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