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動画制作における絵コンテの作り方

動画制作における絵コンテの作り方

動画制作や映像制作における絵コンテの作り方をご紹介します。

近年、スマートフォンや編集ソフトの普及により誰でも簡単に映像を作ることができるようになりました。趣味の範囲で動画の撮影や編集に挑戦する方が増えただけでなく、自社HPや自社SNSアカウントに掲載するための動画を自社で内製したいと考えている企業の方も少なくないのではないでしょうか。

とはいえ、BGMをつけたりテロップを入れたりするだけでなく、人を出演させたりストーリー形式にしたりする場合、カメラワークやキャスト、アニメーションの動きなどのイメージを、登場人物のセリフや動きを記したテキストのみですり合わせるのは至難の業です。

自社で動画の制作を担当するチームを作ったものの「動画の完成イメージを他のチーム内で共有するのが難しい」というお悩みが出てくることも少なくないでしょう。

そんな時に活躍するのが今回ご紹介する「絵コンテ」です。

動画の完成イメージを共有する際、絵コンテを利用すれば認識の齟齬が起こりにくくなります。今回は、これまで絵コンテを作成したことのない方に向けて、絵コンテの作り方をご紹介します。

絵コンテとは

絵コンテとは、動画制作のための設計図(コンテ)の1種です。ほかに「字コンテ」「ビデオコンテ(Vコンテ)」などもあります。具体的には、動画に関わる人に向けて、テキストで書かれたシナリオ(動画の流れ)をもとに作成する動画や映像作品の指示書のことを指します。

基本的に、絵コンテは映像制作会社やフリーランス、監督、演出家などが持つ動画のイメージを、クライアントや自社内へ共有するために作成します。

そのため、絵コンテには、主に映像のカットおよびカメラワーク、キャストやアニメーションの動き方、ナレーション、セリフなどの具体的な演出を記載します。

絵コンテ作成で重要なのは、認識齟齬を防ぐことです。誰が見ても映像の流れやシーンがわかるような状態にしなければ意味がありません。そこで、ここからは絵コンテに必要な要素や基本的な作り方の流れについてご紹介します。

動画の絵コンテの作り方

ここからは、動画の絵コンテの作り方をご紹介します。映像を制作する上で絵コンテには、絵(画像)、セリフ・ナレーション、シーン・カット番号などの要素を記載するのが一般的です。そして、この要素を満たす絵コンテを作成する際は、以下の流れで進めていくと良いでしょう。

企画作成 動画を使ってどんな成果を得たいのか、ターゲットや視聴者にどんな行動変化を求めるのかを整理します。制作する映像の種類、目的、予算、ターゲットや用途もこの段階でまとめましょう。
構成作成 動画の目的、ターゲット、使用場所、伝えたいメッセージ、表現方法を明確にします。構成を作成することで、動画の全体像を捉えやすくなります。
ナレーション・セリフ作成 考えた動画の構成枠に当てはまるように、ナレーションやセリフを作成します。シーンごとに、何をどの場面で伝えたいかをしっかりと整理しましょう。
シーン・カットの決定 どの場面で映像を切り替えるのか、どんな演出をつけたいのかを決定します。動画の完成イメージを、より具体的に落とし込んでいきます。
絵の挿入 動画のイメージを視覚的に理解しやすくするために、絵や画像を挿入します。イメージが伝わるのであれば、絵を書き起こすのでも参考画像でも問題ないです。
シーン・カット番号振り シーン・カット番号振り 関係者間での情報共有をスムーズに行うためにシーン・カット番号を記入します。シーン・カット番号はそれぞれ、制作における情報共有のための記号として使用するイメージです。

ここからは、上記の流れに沿って、絵コンテの作り方について詳しく説明していきます。

ただ、絵コンテには公式的に定められた型や作り方があるわけではありません。制作における関係者同士の認識齟齬を防ぐことができているものであれば、どんなフォーマットでもどんな手順で制作しても絵コンテということができます

そのため、基本的な作り方はあるものの、記載要素やフォーマットは絵コンテの作成者によって異なります。

以下でご紹介するのは、弊社が自社用に制作した動画の絵コンテを筆者が本記事用に再制作したものです。必ずしも以下の型で制作する必要はないため、絵コンテの一例としてみていただけると嬉しいです。

企画を固める

絵コンテは、動画の企画がしっかり固まった段階で作成し始めるのが基本です。動画の企画の中身を明確にしていないと絵コンテを作成するのは難しいため、まずは企画を固めることが重要です。

企画を固めるとは、“面白いプロモーション動画を作りたい”“分かりやすいサービス紹介動画を作りたい”などの漠然としたイメージを具体化していく作業のことです。一言で“面白い”といっても、クスクス笑える面白さなのか、興味を引かれる面白さなのか、色々ありますよね。イメージしている“面白い動画”とは何なのかを整理する必要があります。

​以下の項目を検討し、動画で伝えたい情報が明確になれば企画は完成です。

・動画で何を伝えたいか
・誰をターゲットにしたいか
・どんな映像表現を使用するべきか
・視聴者にどんな行動変化を期待するか
・どんな方向性の動画を作るか
・動画の中身をどうするか

構成を作成する

企画を作成したら、絵コンテを書き出す前に構成を作りましょう。構成とは、動画の骨組みの部分で、家を建てる時でいう設計の段階に当たります。

構成の段階では、先ほどの企画の段階で整理した「動画の目的やターゲット」「使用する映像表現」「視聴者に期待する行動変化」などの情報を元に動画のストーリーを作成していきます。作りたい動画のストーリーの展開や流れが明確になった状態が、構成が完成した状態です。

初めて構成を作成する場合は、動画には「始まり」があって「終わり」があるということを意識しておくのをおすすめします。そうすることで、動画の全体像を捉えやすくなるためです。まず動画の初めと終わりの構成を作ってから中盤の展開を考えると、動画のイメージが湧きやすくなります。

一方で、もっとこだわりたい場合は、「始まりと終わり」だけでなく「起承転結」を意識して作るのもおすすめです。具体的には、以下のような流れを考えていきます。

起:導入・始まり(この映像の意図、この映像をなぜ作ったのかを訴求して視聴者の興味を引く)
承:本題に入る準備(ストーリーを展開させ、視聴者に興味をもってもらう)
転:本題(視聴者の共感や関心を促す)
結:まとめ(オチをつけて視聴者に納得してもらう)

起承転結を意識すると、動画の流れにメリハリが出て視聴者の関心を維持しやすいです。例えば、以下の動画のようなイメージです。

株式会社スペースエージェント 民泊物件.com PR動画

また、動画の構成としては「こんな人に向けたこんな動画ですよ。」と説明する動画のタイトルで始まり、まとめのナレーションで締めるという流れが定番化しています。商品紹介動画やサービス紹介動画などは特にその傾向が強いでしょう。例えば、以下の動画のようなイメージです。

株式会社スピークバディ AIと会話して自宅で最適なレッスンを!AI英会話アプリ スピークバディ

動画の目的別にみると、商品紹介動画やサービス紹介動画の場合は、「タイトル→問題提起(こんな悩みありませんか?)→問題に対して解決ができる商品の紹介、訴求→(実績)→具体的な内容の説明→まとめ」といった構成が用いられることが多いです。例えば、以下の動画のようなイメージです。

株式会社Premier 時計シェアリングサービス“PREwiz” サービス紹介

採用動画の場合では、「会社概要、事業概要を説明→社員による信念や想いの訴求」の流れが定番化しつつあります。例えば、以下の動画のようなイメージです。

株式会社ジンズホールディングス 【JINS RECRUIT 2020】株式会社ジンズ 新卒採用 メッセージムービー

一方で、会社紹介動画などは、テンプレート的に作成すると他社との差別化が難しくなるため、映像で自社だけの魅力を訴求したい場合はオリジナルの構成を考えると良いでしょう。会社紹介動画についてもっとよく知りたいという方は、以下の記事も一緒にチェックしてみてください。

関連記事:会社紹介動画の種類とイメージ通りに制作するためのポイント

ナレーション・セリフを絵コンテに書く

構成を作成したら、次はナレーションやセリフを絵コンテに書いていきます。ナレーションやセリフとは、動画の解説や語りのことで、動画で伝えたい内容を聴覚に訴える役割を果たします。

ナレーション・セリフを絵コンテに書く段階では、先ほど考えた動画の構成(上記絵コンテにおける画面内容)に対応する場面ごとに、音声で伝えたいメッセージを記載していきます。

想定しているナレーションやセリフを、画面内容が書かれている隣の部分(マス)に全て記載すれば完成です。

さらに、動画の流れをイメージしやすくするために、この段階でナレーションを記載するだけでなく、各ナレーションを読むのにかかる時間をストップウォッチで測って時間まで書くのをおすすめします。各ナレーションを読むのに何秒くらい必要か予測することで、動画全体にかかる秒数が明確になります。

「伝えたい情報が多すぎて、動画全体が長くなってしまう」ということがよく起こるので、この段階でしっかりと言葉や情報の取捨選択をしてナレーションやセリフの内容を固めていきましょう。

後から修正することも可能ですが、ナレーションやセリフを事前に明確にしておくと制作スタッフ全員が動画の流れをイメージしやすくなります

また、制作会社に動画作成を依頼する場合は、可能であればナレーションやセリフの原稿を構成ができた段階で自社で考えておき、制作会社に添削してもらうという流れをおすすめします。商品やサービスの魅力や伝えたい想いなどの動画の軸となるメッセージについては、自社の方が1番よく理解しているためです。

とはいえ、自社で考えるのが難しい場合は制作会社に構成作成の段階でイメージを共有して作ってもらうのも良いでしょう。その後に動画を通して何を伝えたいか制作会社と一緒になって話し合いながらナレーションやセリフを確定していくのがおすすめです。

シーンとカット割りを決める

ナレーションを決定したら、動画のシーンや細かいカット割りを決めていきます。シーンとは、一つの場所で展開される一連の場面を指します。映っている場所や画が変わればシーンが変わります。「シーンの変わり目=動画が展開していく瞬間」とイメージしておくと良いでしょう。

カットとは動画全体を構成する1つ1つの動画のことです。「カットが変わる=画面が切り替わる」と考えておくと良いでしょう。

例えば、一回カメラを回して、カメラを止めたら1カットです。カットが増えるほど細かく絵コンテを描き分ける必要があるため、絵コンテの枚数は増えていきます。一概に何枚書くべきなどの決まりはないため、絵コンテの枚数は気にせずに作っていきましょう

そして、カット割りとは制作前に動画上の演出や撮影の方法を決めることです。例えば、人物を表情のアップで撮りたいのか、背景も映して引きで撮りたいのか、などを決めていきます。

「オフィスの雰囲気を伝えたいから社員がコミュニケーションをとる様子が伝わる引きのカットにしよう」「社員の熱意を伝えたいから表情アップのカットにしよう」など、各シーンで伝えたいことをベースに、「どんな画を映したいか」「どんな演出をつけたいか」を記載すればこの工程は完了です。

さらに、特にキャストが出演する実写動画などでは、出演者にどんな表情をしてほしいかや、動画の背景に何を映したいか、などの詳しい情報まで記載しておくと、動画の完成イメージのすり合わせを行う際に関係者に伝わりやすくなります。

絵を挿入する

動画全体のカット割りを決めた後は絵を挿入していきます。絵コンテとは、あくまで共通の認識を持つためのものなので、イメージが伝わるのであれば絵を描いても参考画像を使用しても問題ないです。

ただ、特に絵やイラストを描く際は、絵の上手さではなく分かりやすさを重視しましょう。なぜなら絵コンテは、基本的に動画の完成イメージに対しての認識齟齬を防ぐために作成するものだからです。

絵の上手い下手にこだわるのではなく、「どこに何を映すのか」「どんな動きでみせるのか」が見てすぐに分かるようにしましょう。とはいえ、頭の中のイメージを絵に落とし込むのは至難の業です。

そこで、簡単にイメージに近い絵を描きたい時はGoogle画像検索の使用をおすすめします。Google画像検索でキーワードを入力し、イメージに近い画像を真似して描いてみましょう。

例えば、「新卒採用 社員インタビュー 正面」などで検索すると、見本となる写真が出てくると思います。完全に模写する必要はないので、実際のイメージが伝わる程度のクオリティで描き進めると良いでしょう。

また、手書きではなく画像を使いたい場合は、インターネット上で探したイメージにあった画像を、絵コンテのフォーマットにそのまま貼り付けるのをおすすめします。イメージが伝われば問題ないため、絵を描くのが苦手な場合はこちらの方法が適しているでしょう。さらに、この段階では絵や画像だけでは伝わりにくい詳細な演出についてテキストで補足しておくと良いです。

シーン・カット番号を振る

絵の作成が完了したら、シーン・カット番号を振っていきます。この番号を振っておくと、関係者に動画のシーンの説明をする際に伝えやすくなります。特に編集者は撮影現場にいないことが多いため、編集段階で撮影素材を整理する際に使用されます。

具体的には、シーンが変わる際はシーン番号を、カットが変わる際はカット番号を順番に1、2、3…と振っていきます。シーン番号は場所が変わるタイミング、カット番号はカメラのアングルが変わるタイミングで変わると考えておくと良いでしょう。

動画の絵コンテ作りにおける注意点

ここからは、絵コンテを作る上で気をつけておいた方が良いポイントについてご紹介していきます。

絵のイメージにこだわりすぎない

絵コンテというと絵の上手さが注目されがちですが、絵のイメージについては自分だけで細かく調整しすぎる必要はありません。なぜなら、絵コンテの段階で考えていることと、実際の撮影現場や編集作業でできることは異なるためです。

例えば、「アニメーションの詳細な動きや展開を絵コンテに落とし込んだものの、実際に同じ動きをつけるのは難しい」というケースが想定できます。

絵コンテの段階で細かな表現まで詰めすぎない方が、打ち合わせや制作がスムーズに進行するケースもあります。絵はあくまで動画の完成イメージを共有するためのものなので、こだわりすぎなくて良いでしょう。

とはいえ、撮影のために必要な情報が不足していたら元も子もありません。そのため、絵のデザインにこだわる代わりに、撮影に必要な情報は詳細に記載しておきましょう。

記載しておきたい情報としては、動画で出していい情報や出したくない情報、細かな注釈などがあります。具体的な部分まですり合わせておくことで、撮影当日はもちろん、編集時における認識合わせや作業もスムーズに進められるでしょう。

秒数・分数はリアルに想定する

15秒程度の短めの動画をナレーションやセリフ付きで作りたいという場合は特に、1シーンにかかる時間をしっかり想定しておきましょう。

ナレーションやセリフがある動画を制作する際は、「伝えたい情報が多すぎて、動画全体が長くなってしまう」ということがよく起こるためです。絵コンテの段階でナレーションやセリフを読むのにかかる時間を測り、動画全体にかかる秒数を明確にしておきましょう。

この段階で想定している時間をオーバーする可能性があることに気づけば、セリフを短くしたり、読むスピードを調整したりして対応することができます。

また、どうしてもナレーションやセリフを変更したくないという場合は動画全体の長さを調整することも可能でしょう。

まとめ

動画の企画をしっかり固めた上で、ご紹介した手順で絵コンテを作成することで、「完成した動画がイメージと違った」という認識齟齬が起こりにくくなるでしょう。

とはいえ、「やっぱり自分で絵コンテ作成をするのは難しそうだから、絵コンテの作成も含めて制作を依頼したい」というご要望があれば、弊社にお気軽にご相談ください。皆様からのご連絡をお待ちしております。

この記事を書いた人

渋井美香
エレファントストーンの経営戦略室 ブランドマネジメント課所属

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