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映像作家も多数参加!国立西洋美術館創館65年目にして史上初の現代美術展に注目!

映像作家も多数参加!国立西洋美術館創館65年目にして史上初の現代美術展に注目!

画像参照:https://www.artmuseums.go.jp/museums/nmwa

こんにちは、映像制作のエレファントストーンが運営するオウンドメディア「ZOOREL」です。多様性や交流の象徴とも言える「ミックスカルチャー」を他に先駆けて実践している表現分野として現代アート。3月12日(火)から開催されている国立西洋美術館(東京上野)の現代美術展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」は西美65年の歴史において初の現代美術展として注目のイベントです。

そしてこの現代美術展では注目の映像作家たちの作品が発表されています。本記事では、この展示の概要、注目ポイント、参加する注目のアーティスト(映像作家を中心に)をご紹介していきます。

創館65年目にして史上初!現代美術展の概要

【会期】
2024年3月12日(火)~5月12日(日)
【開館時間】
9:30~17:30(金・土曜日は9:30~20:00)
※入館は閉館の30分前まで
【休館日】
月曜日、5月7日(火)(ただし、3月25日(月)、4月29日(月・祝) 、4月30日(火)、5月6日(月・休)は開館)
【会場】
国立西洋美術館(東京上野)の企画展示室

この春、国立西洋美術館では、「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか​?——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」展を開催します。

本展は、西美65年の歴史において初の現代アート展であり、国立西洋美術館の存在を様々なアーティスト視点から問い直すと同時に、日本の現代美術シーンにおけるひとつの分岐点となるであろう、今年大注目のイベントの一つです。

参照:https://www.nmwa.go.jp/jp/information/pdf/20240125_press.pdf

日本在住のアーティストおよびアーティスト集団の多種多様な作品がジャンルの垣根を超えて集結。絵画や彫刻だけでなく、現代アートシーンの最前線を走る映像作品も数多く展示される予定です。

三つの注目ポイント

1. 現代アーティストのインスピレーションを深掘り可能

20世紀前半までの西洋美術作品を所蔵する西洋美術館のコレクションに、いわゆる“現代アート”作品は存在しません。美術展の存在意義を見つめ直すことで生まれた本展では、美術館が保管するクロード・モネ、ポール・ シニャック、ジャクソン・ポロックらの絵画とアートの未来を担う現代美術作品を同じ空間に展示。

現代アーティストたちが「先人にどのように触発されてきたのか?」というインスピレーションの源流を辿ることが出来ます。今を生きるアーティストたちが、国立西洋美術館のコレクションに対して「いかに拮抗するのか/しうるのか」という過去と現在の熾烈なせめぎ合いの現場に身を置くことは、鑑賞者にとっても刺激的でクリエイティブな経験となるでしょう。

2. フラットな視点で作品と向き合える

本展開催の背景には「美術館が芸術作品の墓場とならないよう活動するのが重要」であるという企画者たちの強い想いがあります。美術館そのものの意義を再考するこの言葉は、私たち鑑賞者にとっても、深い意味を含んでいます。

自身のクリエイティビティを押し広げ、作品に対するフラットな眼差しを取り戻すためにも、評価が確立した過去の偉大な作品だけでなく今を生きるアーティストが発した複数の声に耳を傾けることが大切です。

3. 問題提起に対するアンサーとしての作品展示

本展は「未来の芸術をつくってゆける刺激の場になって欲しいという創業時の理念にきちんと応えることは出来たのか?」という西洋美術館の自問自答そのものが企画のテーマになっています。

多様なアーティストたちにその問いをなげかけ、作品を通じて応答をしてもらう。ライブ会場におけるコール&レスポンスのように、インタラクティブな形で展示を成立させるその試みは、動画プロモーションや映像制作を考える上でも重要な示唆に富んでいます。

注目のアーティスト

1. 田中功起

田中功起さんは、映像制作や執筆他、多様な芸術実践を経て、人々の協働や共同体のあり方を問い直し続けているアーティストです。ロードムービーのようなドキュメンタリー映画をはじめ、出来事の体験と映像化された出来事を体験することの差異、映像の編集過程で生まれる元の出来事とのズレ等、記録の再構成をめぐって問題提起をするビデオ作品も多数発表しています。

『Vulnerable Histories (A Road Movie)(可傷的な歴史)』というタイトルを持つドキュメンタリー映画では、仮構の共同体を組織して撮影する手法を用いることで、異なる人々が「共に生きること」の可能性や限界を探求しています。映像領域での彼の作品は日常を取り扱ったものが多いですが、その中での実験的な行為を通して、ごくありふれた行為やモノの中に潜むコンテクストの複数性を明らかにしています。

こちらの映像では、バケツとボールをモチーフに目的と手段の新たな関係性を探求。モノを入れるという単純な行為一つを切り取っても、無限の可能性が開かれていることをユニークな実験を通して例示しています。

当たり前の出来事や事物を取り巻く枠組みやシステムを徹底的に検証し、再定義しようとする――「Everything Is Everything」というタイトルの上記作では、そんな田中功起さんの批評性が如実にあらわれています。今回の展示でも、人間の振るまいや物事に対する共通認識が偶然の集積によって成立しているということを私たちに気づかせてくれることでしょう。

2. 布施琳太郎

絵画、詩、評論、映像制作、ウェブサイト、ボードゲーム制作、インスタレーション他、布施琳太郎さんは想像し得るあらゆる表現手法を駆使して、独自の哲学や思考を表現する新世代のアーティストです。

ソーシャルメディアによって失われた言葉の可能性。それを“沈黙”という逆説的な形で探った展覧会「沈黙のカテゴリー|Silent Category」(2021年)の記録映像がこちらです。他に例を見ない「物語(キュレーション)」から紡ぎ出される彼の作品は、どれも“孤独”や“二人であること”の回復に向けた問題提起や社会批評を多分に孕んでいます。

「あの冬」「Secret of Magic」と題されたこちらの映像は、Yoshino Yoshikawaら気鋭のアーティストとコラボレーションした作品です。顕名/匿名を問わず沢山の人々と協力して一つの作品をつくり上げています。

また、2022年に開催した個展「新しい死体」(PARCO MUSEUM TOKYO)では、ミュージアムの展示だけにとどまらず、渋谷のスクランブル交差点の街頭ビジョンで、自身がしたためたラブレターを毎日太陽が沈む瞬間に上映。

(上掲リンクでは、3Dスキャニングされた会場の様子を観覧することが出来ます)

人を好きになったり、誰かを傷つけてしまったりした経験。そうした個人的な感情や記憶の中に、社会性や歴史性を見出す彼の思想を大胆なアプローチで具現化しています。

「ここは作品たちが生きる場か?」という国立西洋美術館からの問いかけに対し、現代アート界きっての風雲児がどのように答えるのか。楽しみでなりません。

3. エレナ・トゥタッチコワ

エレナ・トゥタッチコワさんは、1984年にモスクワで生まれ、東京藝術大学で先端芸術を学んだ京都市在住のアーティストです。「人間としていかに世界を知覚し想像できるか」を問いながら、歩き、考え、経験したことを映像、言葉、ドローイング、写真などジャンルを越境しながら表現しています。

近年はセラミックを素材として用いた作品が多方面から注目を集めていますが、今回の現代美術展では国立西洋美術館の展示室を迷い歩いた経験をもとにした映像作品などを発表する予定です。

Instagramでは、海と光、土と水、植物と動物、埋立地と人間といった、常に変化しながら流転する存在に知覚を研ぎ澄ませた映像作品を数多く投稿しています。自然と人工の境界が曖昧になる地平から「大地」を思い、聴こえる音と知覚できない現象のグラデーションの只中に自身を浸透させる――どの映像も自然音の扱い方、拾い方が絶妙で、短い時間ながら没入感あふれる経験を味わえます。

まとめ

1959年の開設以来初となる国立西洋美術館での現代美術展。21組の作家が参加し、鑑賞者に大きな刺激を与えてくれます。是非一度来館してみてはいかがでしょうか?

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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