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AdobeがAIによる画像生成機能を提供開始、メリットと懸念点を考える

AdobeがAIによる画像生成機能を提供開始、メリットと懸念点を考える

この記事では、今話題のAIによる画像生成機能のメリットと懸念点をお伝えします。

2023年3月、Adobe(アドビ)がAIによる画像生成機能「Adobe Firefly」の提供を開始しました。現時点ではアクセス権を公式ホームページからリクエストすることで使用することができます。

プレスリリースによると、Adobe Fireflyの初代モデルでは、あらゆるレベルのユーザーに高品質の画像生成機能および卓越したテキストエフェクトを提供するとしています。

商業利用に特化したジェネレーティブAIのプライベートベータ版を提供開始し、将来的にはAdobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Experience Cloud、Adobe Expressのワークフローに直接搭載すると言います。

Adobeのデジタルメディア事業部門代表のデイビッド ワドワーニ(David Wadhwani)は次のように述べています。

「ジェネレーティブAIは、AIによるクリエイティビティと生産性の強化を次のステージに進化させ、クリエイターとコンピューター間の会話をより自然で、直感的で、パワフルなものへと変容させます。アドビはFireflyにより、ジェネレーティブAIを搭載した『クリエイティブのみなもと』をユーザーのワークフローに直接導入し、ハイエンドクリエイターから、引き続き盛り上がりを見せているクリエイターエコノミーまで、すべてのクリエイターの生産性とクリエイターの表現力を引き出します。」

参考:アドビ、新たなジェネレーティブAI「Adobe Firefly」を発表

AIによる画像生成は近年SNSを中心に騒がれていますが、何がすごいのか、また何が懸念点として挙げられるのかを紹介していきます。

AIによる画像生成とは?

今回のAdobeのFireflyでは、「プロンプト」と呼ばれるテキスト命令を入力すると画像が生成できる「Text to image」、フォントにレイヤー効果のようなスタイルやエフェクトを適用する「Text effects」などが搭載されています。基本的にAIによる画像生成ではAdobeに限らず、この「プロンプト」と呼ばれる文字を打ち込むのが主流となっています。

そして、現時点では中国のNovel AIなどが有名ですが、その技術は日進月歩で複数の画像生成AIがまさにしのぎを削って開発競争を続けています。筆者はそのNovel AIを毎月購入しているのですが、日本のアニメーション風の画像生成を得意としているという傾向があります。例えば、「girl, black hair, school」など単語を複数打つことで、それに適応した画像を生成することができます。

これはその私が実際に初期にAIで画像生成した絵です。「red hair, girl, long hair, yellow green hoodie, light grey denim pants, red traffic, lonely」と打ち込んでいます。つまり、背景に信号を入れて欲しいこと、寂しそうな表情(lonely)そして洋服を色と単語で師弟しています(light grey denim pantsなど)。

ただ、この画像は“完璧にイメージ通り!”という訳ではありません。その理由については後述できればと思います。

現時点では画像生成AIには数十の種類があり、どれもハイレベルなものです。例えば、MicrosoftはBingで「Bing Image Creator」を展開していますし、Discordは「Midjourney」を展開しているなど、各企業が自分たちのサイトの1機能として取り入れ始めています。このように何十もの企業、プロジェクトが開発競争を続けていることで、画像生成AIにもそれぞれ得意分野や苦手分野が出てきているのです。

AIによる画像生成のメリットとは?

AIによる画像生成のメリットはなんでしょうか。

権利がフリーである

AIで生成した画像には肖像権も著作権もいりません。モデルにお金を払ったり、イラストレーターにイラストを描いてもらうという手間がコマンドプロンプト一つでできるためです。実際にすでに一部のwebサイトでは使用するモデルをフリーのAIモデルへと変更しています。

Twitterではますたけさんが「モデルの仕事は早くもAIに奪われはじめた。」とツイートし5万回以上のいいねがつくなど、大きな反響を呼びました。

一方でこちらは当初アニメーション風の画像だけだったAIが技術の進化によって実写の女性を描き出すことに成功し、それが違和感なく受け入れられるレベルになっていることを伝えています。

AIで作った画像が収益になる

Adobeは今回クリエイターに収益化プログラムを搭載することを発表しています。つまり、自分がプロンプトを打ち込んで作成した画像を自分の作品として収益化することが可能になるというのです。すでに副業でAIによる画像生成をすすめるYouTuberも登場しています。

AIによる画像生成の懸念点とは?

反対に、現時点では懸念点も多く存在します。

手足の指を描くのが苦手

AIは、人物の手足の指を描くのが苦手と言われています。実際に試してみると、指が5本ではなくて4本や6本になってしまうことがあったり、苦手なパーツや複雑に絡み合ったポーズについては物理法則を無視して生成されてしまう場合があったりします。

逆に言えば、AIが生成した画像かどうかを明確に見極めるポイントはこの部分のみになってきているとも言え、この欠点も将来的には克服されるだろうと考えられています。

既存の作品の影響を受けている

アーティストが問題視しているのが、AIによる画像生成はAIが「勉強する」過程で多大なイラストデータを読み込んでるという点です。アーティストたちの作品のコピーとも捉えられるため、これは権利侵害ではないかという議論があります。実際に、海外ではこの権利侵害とも捉えられる事態に対抗して戦っているアーティストも存在します。

中国系のAIの多くが日本の特定のアニメーション風の画像を生成していることからも、画風に偏りがあることは否めません。今後AIで画像を生成した場合、その画像が作者の資金源になり得ることも考慮すると、反発が起きるのも当然かもしれませんね。

プロンプトの生成に技術がいる

上述のようにAIによる画像生成は、「プロンプト」を打ち込んで単語を羅列することで画像ができあがるのですが、これには技術がいります。プロンプトはすでにインターネット上で「呪文」と呼ばれており、私が生成した「Novel AI」には元素法典という攻略本のようなものも存在します。

つまり、使いこなすための技術がいるのです。実際に私が元素法典で学んだ後に生成した画像例は以下です。

先ほどの信号の元でたたずむ少女の画像よりもレベルが上がっているのが分かると思います。このように技術次第で画像のレベルが著しく変わってしまうのがAIによる画像生成の実態です。

フェイクニュースの温床になってしまう可能性がある

もう1つの懸念点は、フェイクニュースの温床になってしまうということです。すでに有名人の画像がAIによる画像生成で使われていて、それを元にした嘘のニュースが登場しています。

こちらはイーロンマスクさんの画像ですが、全てAIによるものです。もはや人間では見分けのつかないレベルにまで精度が上昇していますよね。

まとめ

このようにAdobeによる画像生成を皮切りに、現時点でのAIによる画像生成の良い点と課題点を紹介してきました。まだまだ2022年に話題になり始めたばかりのAIによる画像生成ですが、開発競争は熾烈です。

その中でAdobeも勝負をかけてきたということは、2023年はAIによる画像生成時代が来たと言っても良いでしょう。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

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