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動画制作と映像制作の概要と違いについて
「動画制作」と「映像制作」それぞれが持つ意味や違いについて解説します。
近年、スマートフォンや5Gの普及によりシームレスな動画視聴や動画編集が可能となりました。皆さんも、YouTubeやTikTokなどのプラットフォームを通して気軽に動画を見る機会が増えたのではないでしょうか。
実際に、株式会社サイバーエージェントの調査によると、“2021年の動画広告市場規模は、昨年対比142.3%となる4,205億円と高い成長を遂げた”と記載されています。
参考:https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=27195
今後も動画を使ったプロモーションや広告が盛り上がることが想定できるでしょう。なぜなら、スマートフォンやパソコンを通した動画視聴が当たり前になる中で、皆さんが動画に接する機会も拡大しているためです。
この記事の読者の方も、マーケティング施策の一環として動画を活用する機会が増えてきているのではないかと思います。
そんな中で、「動画」や「映像」という言葉が耳に入ることが多くなり、その言葉の違いが気になるなんてこともあるのではないでしょうか。
弊社で聞き取りやWebによる調査をした結果、この2つの言葉の明確な定義の違いは存在しませんでしたが、色々な場面ごとに異なった使用がされるケースを確認できました。
さらに、場面ごとに異なった利用をされる中でも、実際に2つの言葉がどんな場合に使い分けされるのかという点において、ある程度の傾向を見てとることができました。
そこで今回は、エレファントストーンに所属する筆者が調査した「動画」「映像」という2つの言葉の使われ方の傾向をご紹介します。
動画とは
インターネットで調べたところ、動画とは元々、アニメーションの対訳として誕生した言葉であるという説が散見されました。
時代の流れと共に、動画という言葉は文字通り「動く画」という広義の意味で解釈されるようになり、静止画でないものは基本的に動画とみなされるようになったと言われているようです。
上記の定義を現在にあわせてみるのであれば、スマートフォンで綺麗な景色を数秒撮影したものも「動く画」という意味で動画と捉えることもできそうです。
映像とは
こちらもインターネットで調べたところ、映像とは、テレビ番組の放送がスタートした1953年以後、先行メディアである映画との差別化を図るために使用されるようになった言葉であるという説がありました。
テレビ番組と映画では表現方式が異なるため、テレビ特有の新しい呼称が必要とされるようになった際、「テレビとは“像”を“映す”ことによって成り立つ=テレビを構成しているのは“映像”である」という考え方が生まれ、浸透したという意見が多くありました。
上記の定義で判断すれば、車で走行中の様子をドライブレコーダーで撮影したものは映像とはいえないと捉えることができそうです。
映像の語源についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:いまさら聞けない「映像」と「動画」の違い【第2回】「映像」の起源とは?インターレスとプログレッシブ
動画制作と映像制作の違い
動画と映像の意味の違いを辞書で調べてみたところ、それぞれの言葉は以下のように区別されていました。
動画:(アニメーションやコンピューターを通して見ることができる)動きのある画像。
映像:他の物の表面に映し出された物の形・姿。イメージ。
参考文献:新明解国語辞典 第八版
他の辞書でも調べてみたところ、動画の同義語として映像が紹介されている場合もあり、間接的に2つの言葉は似た意味をもつと捉えられそうです。
社内で聞き取りを行った際は、「動画と映像の言葉を意識的に使い分けることは少なく、認識としてはラーメンのことを中華そばと呼ぶ人がいるようなものかもしれない」といった声も上がりました。
とはいえ、「動画」と「映像」という2つの言葉がどんな場面で使われる傾向にあるのかインターネットで調査した結果、近年はインターネットの登場によりその意味合いが「動画」=「インターネット的なコンテンツ」へと大きく変化しているようにも捉えられました。
例えば、インターネットの普及によって、従来の映像をとりまく環境が変化し、テレビやビデオ業界などのプロだけに占有されていた「映像」制作が大衆化した結果、今日的な意味での「動画」が誕生したという説がありました。
具体的には、企業ホームページのトップに掲載されている会社や商品を説明しているものや、YouTubeやTikTokなどの動画サイトにアップロードされている「踊ってみた」などのタイトルがつけられているものなどを「動画」と呼ぶことが多いようです。
一方で「映像」は、大衆化した「動画」と反対に「映像=プロフェッショナル、高品質」などのイメージをもたれるようになったという意見が散見されました。具体的には、テレビCMや企業のブランディングムービーなどを「映像」と呼ぶことが多いようです。
インターネットを利用したリサーチ上では、主に下記のような違いがまとめられていました。
・限られた時間内で得られる情報量の違い
・メッセージ性の有無や伝え方
・求められるクオリティの違い
それでは、それぞれのポイントについて具体的にご紹介します。
限られた時間内で得られる情報量の違い
動画と映像の違いは、視聴時間に対して得られる情報量の差にあるという意見が散見されました。動画や映像を同じ時間だけ視聴した場合、映像に比べて動画から得られる情報量が多い傾向にあると考えられているようです。
具体的には、時間に対してどれくらいの情報が凝縮されているかを定性的に判断する尺度をIPT(Information per Time)と呼び、一般的には、映像に比べて動画の方がより情報が凝縮されたIPTが高いコンテンツとして扱われているようです。
例えば、商品やサービスの紹介動画は、テキストやWebサイトリンクへの誘導など、多くの情報を短い時間で訴求する場合が多いといえます。
一方で、企業のブランディング映像やプロモーション映像は、たくさんの情報は載せずに世界観を表現して制作することが多い傾向にあります。
また、メッセージや素材、世界観、配信媒体などが同じでも、伝える情報の量によって与える印象を変化させることも可能です。次の2つをご覧ください。
動画:株式会社 プレジデント社 動画元年
映像:株式会社 プレジデント社 動画元年
これらは、動画と映像の本質的な違いを表現するためにワンメディア株式会社により制作されたものです。
時間に対してどちらに情報が凝縮されているのかという観点で両者を見比べたのであれば、多くの人が直感的に一つ目が「動画」、二つ目が「映像」であると感じるのではないでしょうか。
どちらも“動画元年が遂に始まる”というメッセージを伝えるために制作されたコンテンツですが、視聴者に与える印象は異なります。
一つ目は、同じメッセージと写真を使用しながらも、限定的かつスピーディーに表示することでわずか9秒という短い時間の枠内でコンテンツを完結させています。
一方、二つ目は、メッセージが表示されたあと、カメラや信号、電車、人物の写真が34秒の時間のなかで連続して映し出されています。
同じメッセージ、同じ素材、同じ世界観、同じYouTubeのコンテンツであるにも関わらず、情報量の違いによって見る人の印象を左右しています。
このように、視聴した際に得られる情報量が多い場合には動画、動画と同じ再生時間でも得られる情報が少ないのが映像と呼ばれる傾向があるようです。
ただ、IPTは定性的な概念で、あくまでも動画と映像の違いを考える尺度の1つとして捉えられているため、動画や映像のクオリティの高さをはかるものではないと解釈されていることも見てとることができました。
メッセージ性の有無や伝え方
さらに調べてみたところ、動画制作と映像制作には、メッセージの伝え方についても違いがあるという意見が散見されました。
30秒などの短時間に情報を凝縮した会社紹介動画などを制作したい場合は「限られた時間でいかにメッセージを伝えるか」が肝心です。
例えば、商品紹介動画を制作する場合は「商品が持つ特徴を短い時間で伝える」ために冒頭で商品の利用シーンを映したりテロップで説明を加えたりして仕上げます。
そのため、一概に断言することはできませんが、限られた時間の中で多くの情報を伝えることを軸に制作されているのが動画、ストーリーや展開に制作者の意図を反映することを軸に制作されているのが映像、と解釈される傾向があるようです。
映像を制作する場合は、制作者の意図を汲み取りながら作業を進行していくため、綿密にストーリーを組み立てた後に撮影や編集などを行う場合が多いと考えられているようです。
例えば、企業のプロモーション映像を制作する際は、企業が発信したいメッセージを軸にストーリーや展開を考える傾向にあります。映像によってはメッセージをあえて暗喩的にしたり、映像全体を鑑賞した後にメッセージが伝わる仕掛けを作ったりすることもあるでしょう。
求められるクオリティの違い
動画制作と映像制作では、求められるクオリティにも違いがあるという意見もありました。
「動画」を使用する場合は、、短時間で面白さが伝わったり、役に立つ情報を盛り込んだりしているコンテンツがクオリティが高いと評価される傾向にあるようです。
スマートフォンやアプリケーションの普及により、誰でも気軽に動画の撮影や編集ができるようになったため、画質や編集技術のほか、視聴者の求める情報を抽出して展開することが動画に求められているのかもしれません。
一方で「映像」を使用する場合は、企業のテレビCMなどのブランディングやプロモーションを行う際に使用されることが多いため、クオリティに映像の世界観やストーリーといった作品性が求められる傾向にあるという意見が多かったです。映像を制作する場合は、発信したいメッセージや意図を伝えるためにも、画質や編集にこだわると良いと言われています。
動画制作や映像制作の進め方
ここまでで、動画制作と映像制作には明確に定義される違いはないものの、言葉のニュアンスや使われ方の傾向に違いがあることが分かりました。
それでは、実際に動画や映像を制作したい場合はどのように進めていけば良いのでしょうか。ここでは、動画や映像を制作する際の流れやポイントをご紹介します。
結論、動画制作でも映像制作でも、基本的な進め方に違いはありませんので、以下でご紹介する制作の流れはどちらにも共通するものだと考えていただければと思います。
【発注前】
①問い合わせ
②ヒアリング
③企画書、見積もり提案
【発注後】
④プリプロダクション(企画から撮影準備まで)
⑤プロダクション(動画の素材集め)
⑥ポストプロダクション(編集から納品まで)
⑦納品
▼制作会社に依頼する際の全体の大まかなスケジュール感
動画の場合も映像の場合も、制作期間は最初の打ち合わせから納品までで、平均的に約3ヶ月程です。
依頼内容の条件によっては3ヶ月以内で納品まで完了することも可能ですが、クライアント様ご自身の確認時間や修正時間に余裕がなくなる可能性があります。制作にかかる工数をご自身で削減できない場合は、納品まで3ヶ月ほどの猶予をもって依頼すると良いでしょう。
会社内で映像のストーリーの企画構成案を提出できる場合や、制作に必要な映像素材を支給できる場合は、制作にかかる時間を短縮することが可能です。
一方で、ロケーションやキャスト選び、CG制作などにもこだわりたいという場合は、3ヶ月以上の余裕をもって問い合わせするのがおすすめです。
制作の流れを詳しく知りたいという方は以下の記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:動画制作の流れとスケジュールについて
動画や映像の目的やイメージを決める
動画や映像を制作する上で最も重要なのが、制作の目的を明確にしておくことです。目指す目的によって内容が大きく変化します。想定できる目的を満たす動画や映像の種類としては以下が挙げられます。
*当メディアを運営しているエレファントストーンでは以下の呼び名を使用することが多いですが、先述した動画と映像どちらも対応しております。
・会社紹介動画
・商品紹介動画
・サービス紹介動画
・採用動画
・動画マニュアル
・教育動画
・展示会動画
・ブランディング映像
・プロモーション映像
例えば、自社のブランディングを目的とする場合は、企業の世界観を重視したブランディング映像を制作するのが良いでしょう。一方で、自社あるいは商品の認知拡大を目的とする場合は、インパクトがあり覚えてもらいやすいPR動画を制作するのをおすすめします。
制作を始める前に、「ブランディング」「認知拡大」「新規顧客獲得」など、動画や映像で目指したいことを明確にしておきましょう。
また、制作を始める前に動画や映像のクオリティ、尺、運用方法など、企業が抱える課題を元に理想像をイメージしておくのも大切です。上記でご紹介した記事に掲載している他社事例などを元に、どんな動画や映像を作りたいかを明確にしていくと良いでしょう。
理想像を見つけておくと、実際に制作したいものの方向性が見えてきます。該当する事例をベースに、自社に当てはめて内容を考えることによって、効率よく制作を進めることができます。
ただ、動画を制作する際にはある程度時間がかかるため、そもそも動画や映像を制作する必要があるのかも念の為考えると良いでしょう。
動画制作や映像制作にかかる費用を理解する
動画制作でも映像制作でも、費用の考え方に差はありません。どちらを制作するにしても、「動画の依頼内容」「動画の尺」「表現方法」などの要素で費用が変動します。そのため、“映像”か“動画”かで費用に差が出ることはありません。
例えば、商品紹介やサービス紹介、企業紹介などを目的とした、SNS用のシンプルかつ短尺の動画で約3万円から制作できる場合があるのに対し、企業ブランディングやプロモーションも視野に入れて作り込まれたものだと500万円以上になる場合が考えられます。
制作にこだわればこだわるほど、制作にかかる費用は大きくなっていきます。そのため、予算の上限は、制作を始める前の段階で事前に決めておきましょう。
先に払える金額を提示しておくことで、その金額に合わせたプランを提案してくれるでしょう。例えば、弊社の場合は予算やご要望に応じて4つのサービスから最適なプランと見積もりをご提案しています。
動画や映像を制作する際にかかる費用は、大まかに企画費・撮影費・編集費に分けられ、それぞれの項目で「人件費」と「諸経費」がかかります。企画・シナリオ作成の費用は平均5〜30万円、撮影費は平均30〜100万円、編集費は平均50〜100万円です。
とはいえ、上述したように各工程ごとに費用には幅が生じるため、費用の検討をする際は「何にこだわりたいか」という点を考えておくと良いでしょう。そうすることで、費用を抑える箇所、費用をかけるべき箇所の検討もしやすくなりますよ。
関連記事:動画制作や映像制作の費用相場について
また、動画や映像を制作する場合はあらゆる要素から費用を決定していくため、同条件で依頼しても制作会社ごとに費用に差が出る可能性が高いです。
そのため、見積もりを確認する上では、費用の差によってクオリティにどのような違いが出るかをしっかりと把握することが重要です。安易に「一番安いところに依頼しよう」という考えは要注意です。安ければ安いなりの、高ければ高いなりの理由があるでしょう。
費用感とクオリティ感がわかりづらい時は、「制作やクオリティにどんな差がありそうか」の観点で、もらった見積もりを他社に相談するのをおすすめします。
動画制作や映像制作の依頼先を決める
前述した通り、動画制作や映像制作の依頼先を決める際は、価格のみで比較するのではなく「どうして価格に差が出ているのか」「その会社が得意としているのはどんな動画・映像か」「目指しているクオリティに仕上げてくれそうか」などを検討するのが良いでしょう。
作りたい動画のイメージやその後の映像の活用が決まっている場合は、それを得意としている制作会社に依頼するのがおすすめです。
フリーランスの個人に依頼したい場合には、比較的安価での制作が可能ですが、動画のクオリティや制作進行は個人のスキルや経験に依存します。
そのため、依頼の際は求めている動画の事例などを見せたり、事前にポートフォリオや連絡スピードを確認したりして、「イメージ通りの制作が可能か」「予算が足りるか」「円滑にコミュニケーションをとれそうか」などを確認しておくと良いでしょう。
制作会社でもフリーランスの個人でも、制作を依頼する際は制作実績を必ず確認しておきましょう。制作実績を見て作風が好みの人や会社に依頼すると、完成時に「こんなイメージではなかった…」という失敗も起こりにくいです。
まとめ
今回は、「動画」「映像」という2つの言葉の使われ方の傾向をご紹介した上で、実際に制作する際の流れや費用についてご紹介しました。
漠然と動画や映像を制作しようと考える前に、まず「何を目的として制作するか」「どんな動画にするか」「そもそも映像を制作する必要はあるか」などをしっかり整理しておきましょう。
そうすれば自ずと「他社サービスと差別化したいから、世界観を押し出した映像にしよう」などと方向性が見えてきます。
とはいえ、「他社事例をみても完成形がいまいちピンとこないから一緒に考えたい」「打ち出し方から相談したい」と言うご要望があれば、弊社にお気軽にご相談ください。皆様からのご連絡をお待ちしております。